"EMO Hannover '97" 見てある記 / (株)アタカエンジニアリング 高倉健二

 
EMOと欧州業界視察研修団(日刊工業新聞社)に参加して。

    9月12日、まだ蒸し暑さの残る名古屋を後に一路フランクフルトへ、オークマ(株)の設計部長の江崎さんを リーダーに15名が集まり、欧州に攻め込んだ今回のツアー、私自身 EMO は8年ぶり、後に控える VW 社と Ferrari 社の見学日程 に胸を躍らせながら、とりあえず EMO で勉強を!
    広々としたまるで公園のような Show Site、会場内にはバスも走っている。 さてどこから見れば?と思えばゲートを 入ったところに案内図、歯車の機械が集まった2号館は写真のようにぎっしりと各社のブースが。
    出展企業22,000社を超える賑わいを見せた今年の EMO Show、見所は?−−高速化、複合加工、ドライカット、 新型オープンCNC、リニアモータードライブ、平行軸が1本も無いのに何故かパラレルリンク機構と呼ばれる機械?
    このショーの1つの特徴は、日本よりも出展社数の多い台湾のメーカー、確かに内容としてはそれほどの物は無いとしても、 その元気の素は?と不思議な気がします。
    そして気が付くのは欧州の底力、各社のブースが元気でした。 イタリアのメーカーが展示していた機械の素晴らしい カバーデザイン、その色使いと斬新な設計力、これも1つの実力でしょう。 まだまだ学ぶことの多い欧州をそんなとこ からも感じてしまいます。



EMO Show !  偉大なるアンテナショップ?
    本来このショーは新技術発表の場、と聞かされていました。 確かに色々な新しい挑戦が見受けられました。 中でも一番目立ったのはなんといってもこの機械。 INGERSOLL 社の ”HOH-600”、そしてこの種類の機械がなんと 10社以上から出展されていたようです。
    機械屋の目で見ると、実に不思議な物体に見えます。
    3社から手にした資料を見ると剛性もスピードも従来型5軸マシニングセンターの3倍と書かれています。  しかしデモ機ではどこも機械の大きさの割には非常に小さい物を加工、駆動源はサポートも兼ねるボール スクリュー、早さといっても限界が有りそう、しかもリニアモータースライドには勝てそうに有りません。
    加工精度にしてもフレームとコラムを持った従来機に勝るとも思えません。 自由度と言えばロボットアーム にスピンドルをつけた物とどう違うのか? そして一部の機械では加工機としてでは無く、組付け機としての 役目を期待されていました。 又、その自由度を使ってのチャンファーリング機の様な応用も。
    この機械の誕生のいきさつは、近未来に於ける宇宙又は月面上での機械加工を期待されての事と聞き、なるほど と実感しました。 質量の大きな構成部分(フレーム、コラム等)を必要としない機械、やはり未来の機械なの でしょうか。
      何とも言えない魅力を感じるのは私だけでは無かった様で、どのブースにも人波が出来ていました。 どうやら、この機械の現時点での存在理由を掴めるかどうかがこのショーの一つのポイントかな?と言う気がし ました。



     *** 歯車機械に於ける新たな挑戦は? ***

GLEASON 社の挑戦!
    Hurth 社に続き、Pfauter 社をグループ内に加えた Gleason 社、今回のEMOには8台のマシンを展示、そのフルライン 体制を堂々とアピール。
    ショーでの新技術発表はフェニックス450HCに於ける、高速ドライカット、外径約10インチ、Module 5.9 の 自動車用ハイポイドギアを Face Hobbing にて 1.25 分との事。
    その他の出展機械は、大型ホブ盤の400GH、ローダーの付いた歯研機TAG−400、Pfauter のP210ホブ盤 ではやはりドライカットを、P200GはCBNプロファイル研削盤、PSA120はローダー付きのGear Shaper。 そして Hurth からはZH125CNCEという Gear Horning 盤とZEA−4というデバーリングマシン。
OERLIKON 社からの提案は!
    Klingelnberg Group となったエリコン社からの新たなる提案も新型機械C−28を使ったドライカットだった。 外径約9インチの自動車用ハイポイドギアを Face Hobbing にて 1 分29秒にて切削していた。
    複合加工化の波に乗ってか Liebherr-Lorenz から LCC150というワンチャックで同時にホブ切りとシェーピングを 行う機械が出展されていて驚かされた。 こんな事が出来るように成ってしまったのもCNC制御のお陰なのでしょうか? 一台のマシンの中に3つのステーションがあると言う機械は三菱重工から出展されていましたが---。
    Klingelnberg Group のブースは Gleason Group の隣に接し、いよいよこの2大グループが世界の歯車業界をリード していく事をその圧倒的に広いブースで世界に宣告しているようにも感じられました。




     *** EMO Show 雑感 ***

普通の機械となった?歯切機械!
    一般工作機械への新しい波は今まではどちらかと言えば特殊な機械と考えられてきた歯切機械へも容赦なく襲いかかり 高速加工、ドライカットは当然の課題となったようです。 Lorenz LCC150の様な複合加工までも受け入れて しまう歯切機械、いつからこうなってきたのかを考えると、それは8年前のこのショーからかなと思われます。 その時、Gleason, Oerlikon, Klingelnberg の各社が一斉に発表したCNC制御の歯切機械。 メカ機がコンピュータ と合体したときから普通の機械へ仲間入りしたのでしょうか。
ドライカット、その現実は?
    Gleason, Oerlikon 両社で力を入れ発表していたドライカット、この手法そのものは特に新しいものでも無く、 ホブ盤などではカシフジが昨年の JIMTOF でその資料を掲示していたように、その可能性は以前から注目されている 物です。 高速加工になるために機械側に相当分の剛性が要求される他、加工時に発生する熱を受け持つチップの 処理方法に工夫がいるなどです。
    しかしなんと言っても一番の問題は炭素鋼系で作られた工具と被加工物となるワークの素材とのマッチングであり この微妙な問題を解決できない限り、メーカー担当者から自信のある営業トークは発せられないままに終わるんでは 無いでしょうか。
    でもこの開発を機械メーカーにのみ押しつける事が出来るのでしょうか? 
全ての可能性は挑戦から生まれる!
    このEMOショーを見る限り、新しい技術は全て完成しているとは思われません。 しかしもう今までのように、 ユーザーはメーカーの保証する加工スペックを頼りに生産ラインを計画していたのでは生き残れ無くなっていくのでは 無いでしょうか。 新しい挑戦はメーカーだけがするものでは無く、ユーザーと共にその可能性を探って行かなくては たどり着けなくなっているような気がします。
     パラレルリンクマシン、ドライカット、複合加工機、高速加工、リニアモーター、この偉大なるアンテナショップ ”EMO”で見つけた生き残りへの鍵は自分たちにも共に汗する事を求めているような気がしました。
    ”成功への近道はないよ”と言う声が会場を一歩出たとき、後方から聞こえてきたように感じたのは私だけ だったのでしょうか。


      *** 以上 ***

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